マグダラのマリア

ダ・ヴィンチ・コード」を読んだときに、積んでいたのを思い出した本。なので、その読了後に読み始めたのだが、案外と読み終えるまでに時間がかかった。が、途中飽きることもなく読み進められた。こんなに時間がかかったのは大きな割り込み処理が入ったからというだけだ。
 まず取り上げるべきなのは、やっぱりそういう点のような気がする。非常に読みやすい。そして多くの絵画や詩からの引用を含みながら、それらについて過不足無い説明が加えられていて、分かりやすい。まあ勿論、専門家にすれば不足なのかもしれないが、私のような門外漢にとってはちょうど良かった。ばかりか、多角的にマグダラのマリアについて語っており、その魅力も伝わってくる。っというのは読み手次第かもしれないが、入門書としてみるなら最高といえるだろう。
 多角的、について少し触れておこう。章ごとに様々な面から見ている。四章構成で、第一章では聖書や外典などの記述から現在広く伝わっているマグダラのイメージができるまでを見て、第二章ではキリスト教の修道会をいくつか挙げてそれぞれでのマグダラの解釈を見ている。いわばマグダラのマリアについての基礎知識みたいなものだけれど、宗教的な意図や時代背景や女性に対する考えなどが垣間見えるように書かれていて、興味深い。後半は絵画が増える。第三章ではルネサンスバロックの時代の絵画作品と娼婦をマグダラを通して絡め、第四章では「襤褸をまとったヴィーナス」の章題に相応しくマグダラの魅力がこれでもかと記述されている。
 マグダラのマリアを主軸に、宗教や歴史や当時の社会や美術作品と、よくぞ230ページほどの一冊に収めたと思うほど豊富な内容で、個人的には「ダ・ヴィンチ・コード」より楽しめた。