下流社会 新たな階層集団の出現

「失敗」「自殺」ときて次は「下流」を読んだわけだけれど。
 いや、別に悲観してたりとかそういうんじゃないですからね。一応。

 かなり数値の表が多い。それを読み取るのがけっこう苦労する本。
 これが売れてるというのはなかなか凄いことだと思う。
 いささか、そう読み取るのか、と不思議に思ったりもしつつ読んでいたが、まあそれがマーケティング・アナリストという職の読み方なのだろう。中流が上下に分裂する、特に下流が増える、というストーリー自体はそんなに無理があるように思えなかったので、大筋では納得といったところ。
 まあずっと表だけ並べても大して変わらないんじゃないか、というくらい全体を通してデータに基づいているというか、ストーリーの提示以外は、ストーリーに沿った表からの読み取りしか行っていない。
「おわりに」で提案もしてるとはいえ、これは酷い。機会悪平等はいいとしても、そのために「上」の魅力を削ぐようなことしか言っていない。これでは本末転倒と言える。まあ確かに大学の学費とかは結構するな、と思うが(個人的な感想では、その割りに今受けている大学院講義には満足していない。大学時代の方はそうでもなかったのだが)、大学も法人化とかで国から切り捨てられつつあるところに学費の収入は教える側の給料に響いてくるだろうが、それを無くせというのでは、教える側が減る(あるいは質が低下する)ことは当然ではなかろうか。この提案はどうも世間に迎合しているようにしか思えないし、先細りが予想されるような事柄だと思う。まあ寄付はそんなに悪くないかとは思うが、真に必要なところに金が流れない可能性は勿論ある。メディアの影響で世間により注目されているところに寄付すれば、社会的名誉が買いやすくなるわけだから。
 というわけで、まあ概ね現状と近い将来を見るにはいい本だと思う。いかに社会を流動化させていくか、というのは重要な課題であるように感じた。