死よおごるなかれ

  • あるガン医の告白
  • 著者:田崎勇三
  • 読売文庫
  • 読売新聞社
  • 昭和30年9月1日印刷
  • 昭和30年9月10日発行

 私の祖父が死んだとき、家には一部屋だけの中二階があり、そこが故人の書斎だった。その中にあった一冊なので古い本だ。奥付に定価130円という表記があり文庫ながらサイズは新書のものだ。
 内容はガンに関する当時のノウハウの概要といったところ。副題は出版社の暴走といってよいと思う。胃ガンを中心に語り、肺ガンなど各種のガンについてもひととおり述べている。胃ガンが中心なのは、それが発見しにくいからといい、その予防のために食事への忠告などが書かれている。
 それにしても記述がところにより叙情的というのか、やけに味わいがある。文章に工夫することで堅苦しくなくしているのか、それとも著者の人柄なのか、興味深く読んだ。
 最近のガン研究や診断や現場医療がどうなっているのかは知らないので、比較しようもないが、なんにしても情報としては古いのは間違いなかろうが、大きく革新されるようなこともないのではと思われるので基礎として、現在の状況と比較すると面白いかもしれない。なので現状を知りたくもなった。