心でっかちな日本人

 解説は長谷川眞理子
 社会心理学の本だろうけれど、タイトルはなんだか内容にそぐわないような気がする。というのも、心でっかちというものや、なぜそうなるのかを語っているというよりは、別の原因を求める実験の様子が主に書かれているからだ。
 とくに興味深かったのは、頻度依存行動というモデルがあることを知れた点で、行動を決める要素を行動によって変化させることで、同じ要素によって行動を決める他者に影響し、その連鎖で全体が変わっていくというモデルは再帰的で面白かった。また、影響の広がりの始点となるのは、行動を決める要素を勘案せずに行動を起こす者たちという点も興味深かった。
 どうにも論理展開に、いまひとつな感がある。大げさにいえば、騙されているような気がしてならない、ということになるが、そこまでではなく、著者の敷衍が、必要な条件を維持したままではないように感じられたり、その実験結果から本当にそれが言えるのだろうかという疑問が、読んでいてずっと付きまとっていた。たとえば、孔雀の羽の話にしても、好みが遺伝することが示せなければ頻度依存とはいえないのではないか、という気がする。もっとも、私は社会心理学を全く知らないので、頻度依存の正確な定義は私の理解と異なるかもしれず、また他の知見と合わせれば実験結果の解釈も当たり前のものなのかもしれない。
 社会心理学の知見には面白いものがあるのだなあと思った。