世界平和は一家団欒のあとに6

 短編集である。シリーズ最新に追いついた。
 内容は5作。雑誌掲載作が2、書き下ろしが2、書き下ろし掌編が1、という構成だが、初出一覧のような情報が本書に見当たらなかったので、どれがどれかは不明。各題名は収録順に、
「悪党退治は何カロリー?」
星の王子さま
「刃の行方」
「大邪神の夜」
「おまけ・世界童話も一家団欒のあとに」
となっている。
 話の基本的なつくりは、長編も含めて同じなのだが、短編になるといろいろなシーンと登場人物を混ぜて下地を作ることが難しくなるので、やはり盛り上がりはいま一歩劣る。同じ結果でも“こんなこともありました、そんなこともありました”とあった方が結果に思い入れが増すということだと思う。
 最も気に入った作品を挙げるなら「大邪神の夜」だ。とりあえずジュンパ・ラヒリ「停電の夜に」を「大停電の夜」だっけと間違って思い出して(そのはず未読なのだから)、調べると「大停電の夜に」という映画があるらしい。関係があるのかは不明だ。どちらも内容は知らないので。
 何が気に入ったかというと、主役が彩美と七美なのだ。軋人は全く出てこない。軋人が嫌いなのではなく、この姉二人のやりとりが面白い。主に彩美視点なのだが、自分より強くとも家族として妹として思い遣っている様子が、格好良い。キメの一撃のあたり、とくに良い。
 あとは「刃の行方」のイラストの柚島が可愛かった。