短歌という爆弾 ―今すぐ歌人になりたいあなたのために―

 赤い装丁の、短歌の入門書。
 短歌から著者が受けた印象を、論理的に解説することを試みた本だろう。もっとも、その論理の立脚点が既にして高度な読解力に基づいているものだから、いささか置いてけ堀を喰らった箇所がないわけではない。
 しかし、それにしても面白かった。読解が追いつかない箇所はダレるのだが、それは第三章の後半のみで、そこまで到る第零章「導火線」から延々と短歌の話でありながら読み方と詠み方について興味深く、終章からあとがきにかけては著者の人生における実感が極めて鋭い言葉でつづられる。このどちらも、非常に楽しめる。
 個人的に気になった点を挙げておく。

ここにいる疑いようのないことでろろおんろおん陽ざしあれここ
加藤治郎

 という歌のオノマトペ「ろろおんろおん」に関して190ページからの、オノマトペの妥当性に関して語られる部分で

五感の上位にあってそれらを相関させるような、ひとつの身体的な実存感覚を想定することが可能だと思う。

 と述べられている(191ページ)。これは言語の本質の一端を突いたものだと思う。私はここに想定されているものを、具体的に把握したいと思う。
 さて、いささか話が逸れたが本書の感想に戻るとしよう。そういえば小学校のころは嫌だった読書感想文を、今や能動的に書いているというのも変な話ではあるが、それはまあ置いておいて。
 短歌に限らず、文章全般に関しての入門書と、本書を位置づけても良いように思う。観想すること、書くこと、作り出すことなどに、極めて真摯に取り組む様子を手渡してくれる。