神種 -シェンシード-

 まず、手にとって厚さにちょいと驚き。
 新らしく創刊された文庫(ラノベの文庫ということでいいんだよ、ね?)なので、どれか一冊くらい読んでみようと思いつつ、榊一郎氏とかも居た一月のはスルーし、本書にしてみた。
 ボイルドエッグズてのは、何か名前を聞いたことがある気がするけれど、なんだかよく分からないところという印象で、確か賞の名前か何かで聞いた覚えがあるのだけれど、あとがきによると著作権エージェントらしく、しかし帯を見ると「ボイルドエッグズが贈る」とあるからプロデュース的なこともしてるのやら、それとも作者の団体なのやら、謎。まあ偶然名前が同じ(もしくは似ている)別モノということもあるかもしれない。
 さて、前置きが長くなった。本書の内容について触れよう。
 巧くできている。ツギハギで話を作るのは物語作りのよくある手法の一つだけれど、この話はその印象がある。あ、映画にありそうなシーン。とか、映画にありそうなセリフ、とかいうことを読みながら思った。そのツギハギ方が巧くできていると思う。具体的に何と何を繋いだというわけでもなく、よくあるシーンのイメージとかをぐつぐつ煮込んで溶かし合わせた感じ。それでいて順調に展開していく物語あり、無理の無いキャラクター配置あり。
 ただ、どうも何ってなく、ツユをつけないソーメンを流し食うみたいな、訴えかけてくるものが弱いというような気もした。主人公の両親とのふれあいにもっとページを割くべきではなかったのか。最後あたりで対比させていた人物の境遇も強調して、より克明に差を浮き彫りにすれば良かったのではなかろうか。それと、最初の方を読んでいた印象だとサイバーな感じに展開していくのかと思ったら、全くそんなこともなく、IT系はギミックとして配置されていたに過ぎなかったので、そのへんは読み終えた今では期待はずれの感も否めない。あと、余計なお世話だけどついでに書くと、ライトノベルらしくページの下のほうは白めで、このへん詰めたらもう少し本が薄くできた(つまり安価になった)んじゃないかなぁ、とか思わなくもなかった。もしくは、このスペースにもっと濃い描写を入れるとか、さ。それならこの厚さでもいいけど。
 な、なんか偉そうだな、私(苦笑)。
 では総評。巧く出来ていて悪くない。ただ、サイバーを書きたいのかアクションを書きたいのか恋愛を書きたいのか家族愛を書きたいのか、なんだか色々と詰め込むのは構わないのだけれど、軸が定まっていないような印象を受けた。
 これはあれだ、必殺「次回作に期待」(笑)。まあ私が買って読むかは知らないけど。