マヴァール年代記3 炎の凱歌

 全三巻で完結。
 あっけないような終わり方だと思う。いっそリアリティがあるくらいに。全体を通して思い返してみても、多分に史書的な調子であり、事実を語るように書かれていた。とはいえ、たとえば「後宮小説」(著・酒見賢一)ほどにはリアルさを感じなかった。もちろん書かれているのが近似ハンガリーか近似中国かという差もあるとは思うが、文化や習慣、習俗といったものを書いたほうがリアリティが増すような気がした。
 さて最終巻では皇帝となったカルマーンが、いよいよ雌伏から目覚めるヴェンツェルと対峙する方向に物語は動いていき、そのなかでシミオン、ゾルターンなどからリドワーン、アンジェリナまでそれぞれの去就が決する。何度もしつこいようだが、わりと史書的に出来事を見通すような書き方がしてあるのだが、結局マヴァール帝国や周辺王国についてではなく、登場人物の去就をもって物語を閉じているからか、どうにも完結という感覚が薄い。
 あと、あとがきがほどよく面白い。