ベガーズ・イン・スペイン

 昨年に読み終えたけれど、感想書きが年を越してしまった。
 書店で〈プロバビリティ〉シリーズを見かけて、買おうかでも三冊かと迷ったときに、同作者の本書を見つけて、まずはこれを読んでみようと手にした。
 目次は以下のようになっている。

  • ベガーズ・イン・スペイン(訳:金子司)
  • 眠る犬(訳:山岸真
  • 戦争と芸術(訳:金子司)
  • 密告者(訳:田中一江)
  • 想い出に祈りを(訳:宮内もと子)
  • ケイシーの帝国(訳:山田順子
  • ダンシング・オン・エア(訳:田中一江)

 解説は山岸真
 どれをとっても面白かった。表題作「ベガーズ・イン・スペイン」はなんといっても傑作だと思う。「戦争と芸術」は好きな作品だし、「想い出に祈りを」の読後感はため息が出る。「ダンシング・オン・エア」の緊迫感も楽しかった。
「ケイシーの帝国」で電話をかけてくる両親の発言における男女の違いも上手いなあと思ったけれど、解説などで書かれているように全編にわたって親子関係がよく書かれていて、とくに母と娘の、それも仲が良いというわけでもない関係が印象深く、何度か登場する。そうした関係性から各作品が発芽しているような気もするけれど、単に私の気のせいかもしれない。
 ともあれ大満足の一冊だった。〈プロバビリティ〉シリーズも入手することにしよう。